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大沼 美里

沈金という技法の中で何ができるか、常に考えています。
西洋風な外観を持つ秋田県湯沢市の大町商店街。
その通りの中ほどに「工房 琥珀」はある。
足を踏み入れると、ゆったりと時間が流れる落ち着いた雰囲気のカフェだが、
入って左側には漆器を相手に作業をする女性が座っている。
彼女は沈金師の「大沼 美里」
工房内でカフェを経営しながら、漆器に模様を施す「沈金」という伝統技法を守っている。


漆器の装飾技法の一つ。漆面を削った痕に、漆を使って金箔や顔料を押し込んでいく。
就職した地元の仏壇屋での研修で沈金と出会い、
退職した数年後に沈金の技術を磨くため、
3年間の伝統工芸後継者育成事業に応募した。
その後は伝統工芸館での勤務や
地元商店街の空き店舗利用チャレンジショップなどを経て、
2011年、現在の場所に「工房 琥珀」をオープンした。


工房琥珀


工房琥珀
もともと鉛筆で絵を描くのが好きだった彼女にとっては、
線で漆器を掘っていく沈金の作業が性に合うのだという。
作業を見ていると、下描きをした漆器を躊躇することなく掘っていく。
「沈金では漆器を削る深さや漆の埋め方で立体感が変わるんですが、
その試行錯誤が沈金の面白さだと思いますね。
沈金という技法の中ではできることが限られています。
その制限された中で自分にはどういうことができるか、というのは常に考えています」
その言葉通り、彼女の作品のモチーフは伝統的な文様の他にも
ガーベラやカエルなど今までの漆器には見られなかったユーモアあふれる物が多い。

沈金は漆器作りの中でも最後の工程だ。
木を削る人や漆を塗る人が作り上げたものに対して
バランスの取れた模様付けをするように心がけているそうだ。


勿体無くて使えない、って言われたら負けですね。
「沈金は漆器づくりの最後の作業で、
言ってしまえばなくてもいいものなんです。
あくまでも主役は器の中身なので、『ひそっ』と引き立てる存在が理想です。
逆に勿体無くて使えないと言われてしまうと、負けたって思いますね。
多くの方に使ってもらえる気軽さが漆器の良さですから」

いま、沈金師などの伝統を伝える工芸師は少なくなってきている。
「必要とされれば伝えていきたいです。
ただ、現在ではこの作業だけで十分に稼ぐことができないのが現状です。
学ぶ場を守りながら、産業として 環境を整えることが必要になりますね」

この控えめでおっとりとした印象の作り手は、
彼女の人柄のように落ち着いた美しさを放つ作品を、今日も生み出し続けている。

※文章は2014年2月現在のものです。

工房琥珀